ScreenRant誌に、Adrienne Tyler氏による興味深い時評記事が掲載されていましたので、ご紹介します。
Adrienne Tyler, “Say Goodbye To Benedict Cumberbatch’s Sherlock As It’s Officially The End Of An Era”, ScreenRant, 2026年7月6日

この記事は、BBC『Sherlock』(2010〜2017年)に代表される「現代ロンドンを舞台にしたホームズ翻案」の潮流が、ひとつの時代として終わりを迎えつつある、という見立てを提示しています。
『Sherlock』とCBS『Elementary』(こちらはニューヨーク舞台・ワトソンを女性化した翻案)が切り拓いた「現代設定もの」の系譜は、後続のCBS『Watson』などにも受け継がれてきました。しかし記事の筆者は、現在ハリウッド・配信業界で企画が進んでいるのは、むしろヴィクトリア朝という原作の時代設定に忠実な作品群だと指摘します。具体例として挙げられているのが、Netflixの映画三部作『Enola Holmes』(ホームズ兄妹の妹エノーラを主人公とする)と、Prime Videoのドラマ『Young Sherlock』です。後者はAndrew Laneの小説シリーズを原作とし、若きホームズとモリアーティが手を組んで事件を追う、という設定になっているとのことです。
記事はまた、『Sherlock』のスペシャルエピソード「忌まわしき花嫁(The Abominable Bride)」を、現代設定とヴィクトリア朝設定を混在させた結果、物語として成功しなかった例として振り返り、「時代設定に忠実な翻案は簡単ではない」ことを示した事例として位置づけています。結論として筆者は、現時点で大手ネットワークや配信サービスが新たに現代設定のホームズ翻案を制作している様子はなく、業界の関心は「原作の時代に忠実だが、そこに工夫を加えた翻案」へと移っている、とまとめています。
もちろんこれはエンタメメディアの論評記事であり、学術的な調査に基づくものではありませんが、近年の翻案動向(『Enola Holmes』三部作のNetflixでのヒット、『Young Sherlock』の続編決定など)を踏まえると、傾向として頷ける部分はあります。一方で、「モダン・ホームズ」自体が本当に終わったと言い切れるかどうかは、今後の企画次第でしょう。個人的には、『Sherlock』的な現代翻案と『Young Sherlock』的な時代考証重視の翻案は対立するものというより、周期的に人気の重心が移ろっているだけ、という見方もできるように思います。

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