先日、Facebookで流れてきたリンクをたどっていったら、思わぬ拾い物をしました。sherlockholmessociety.comで販売されている、Thomas W. Campbell著『Watson & Doyle – Part 1』の音声版です。
「ドイル=ワトスンの文学エージェント」を、一冊まるごとの物語として
世に知られる「シャーロック・ホームズ」の物語は、スコットランド出身の医師アーサー・コナン・ドイルが一人で創り出したフィクションだ、というのが一般的な理解です。しかし、コアなシャーロッキアンは、ホームズ作品はワトソンが書いたもので、ドイルは文学エージェントだったという立場を取ります。つまり、ホームズとワトスンは実在の人物であり、ドイルは二人の実際の事件記録を世に送り出す協力者だった、という話を、100年以上隠されてきた”秘史”という体裁を取って書いたのがこの作品なのです。全35章、舞台は1886年1月から1893年12月まで。ちょうど『緋色の研究』から『最後の事件』に至る、正典前半26作品が世に出るまでの期間と重なる、6年間のホームズ、ワトソン、ドイル三人の協業(そして時に生じる軋轢)を追う作品となっています。
なぜ異色のパスティーシュなのか
シャーロッキアーナ(ホームズ研究)における「The Game」では、「ドイルはワトスンの文学エージェントだった」という前提を、いわば約束事としてあっさり置いた上で議論を進めるのが通例です。本作が面白いのは、その前提そのものを検証も説明もせずに借りるのではなく、二人がどう出会い、どんな条件で合意し、どういう経緯でその関係が長年間続いたのかを、一つの長編物語として一から構築してみせている点だと思います。いわば、The Gameが暗黙の前提としている土台そのものを、正面から物語化した作品と言えそうです。
自分のパスティーシュとの共通点
現在取り組んでいる、「ボヘミアの醜聞」と「最後の事件」を結ぶパスティーシュも、正典本文にさりげなく書かれた記述の裏に何があったのかを描く、という点で本作とアプローチが近いように感じています。正典のちょっとした一文の背後にある物語を掘り起こす作業は、方向性は違っても本作と地続きの営みだと思うので、聴きながら参考にできる部分もありそうです。
Part1といことなので、続編もある物と思われます。正典後半の3人の関係についても楽しみに待ちたいと思います。
出典
- Thomas W. Campbell, Watson and Doyle(音声版タイトル: Watson & Doyle – Part 1)、sherlockholmessociety.com 商品紹介文および購入ページより

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