前回は、Obsidianを使ったホームズ知識のセカンドブレインについて、素材の分類・3層構造・ユースケースの洗い出し・基盤テンプレート(正典/地名/人物)の型までを設計しました。

今回は、その仕組みを「作った後、実際にどう回していくか」という運用設計の部分を記録します。
3つの前提条件
テンプレートの型は決まりましたが、実際に動かす段階で判断がぶれないよう、以下の3つを設計の前提として固定することにしました。
- 自動化できるところはできるだけ自動化する
- できるだけコストをかけない
- 文書は継続的に増えるので、更新が楽であること
正典60編は有限ですが、論文・ジャーナル・ブログ記事・メモは今後も増え続けます。「一度作って終わり」ではなく「増えても同じ手順で回り続ける」ことを前提にする必要がありました。
Claude Coworkという選択肢
Claude Desktopの「Cowork」機能を使うと、MCPサーバーなどの設定なしにローカルのVaultフォルダへ直接アクセスできます。これにより、Vault内のノートを読み込んで、要約・リンク付け・新規ノート生成といった作業をまとめて任せられます。
当初「Maxプラン以上が必要」という情報を目にしていましたが、確認したところ現在はPro・Max・Team・Enterpriseすべてのプランで利用可能でした(Pro/Maxの違いは使用量上限のみ)。これにより、既存のClaude Pro契約の範囲内で、この仕組み全体を回せる見込みが立ちました。
新規資料の取り込みフロー
「増え続ける」ことに対応するため、Vaultの外に種類別の「投げ込み場所(Inbox)」を用意する設計にしました。
00_Inbox/ papers/ 論文・ジャーナルPDF blog-drafts/ ブログ新規記事 talks/ クラブ発表資料 apple-notes/ Appleメモのエクスポート
人間がやることは、該当フォルダにファイルを置くだけです。論文PDFであればZoteroでメタデータを自動抽出し、それを踏まえてCoworkが索引ノートを生成、関連する既存ノートへのリンクも合わせて追記する、という流れです。処理が終わったファイルは退避フォルダに移し、二重処理を防ぎます。
「育つWiki」という考え方との出会い
設計の途中で、海外で話題になった「Claude×Obsidianで“第二の脳”を作る」という手法(Andrej Karpathy氏が発案し、@defileo氏が広めたとされる”LLM Wiki”という考え方)を知る機会がありました。これは、通常のRAG(都度ファイルから関連箇所を検索して回答を組み立てる方式)とは異なり、AIが新しい資料を読むたびに知識を「育てる」構造を持つ点が特徴です。
読んでみると、これまで設計してきた3層構造(原典/索引ノート/MOC)は、この考え方でいう「Raw sources/Wiki/Schema」とほぼ同じ発想であることが分かりました。一方で、次の3点は今回の設計にまだ組み込まれていなかったため、追加することにしました。
① CLAUDE.md(運用マニュアルの一元化)
Vaultの構造・命名規則・テンプレート・処理手順を1つのファイルにまとめ、Vaultのルートに置きます。Coworkはこのフォルダで作業を始めると自動的にこのファイルを読み込むため、毎回口頭で指示し直す必要がなくなります。
② Lint(定期的な健康診断)
週1回を目安に、Vault全体を対象に「矛盾している記述」「どこからもリンクされていない孤立ノート」「繰り返し言及されているのに専用ページがない概念」「古くなっていそうな記述」を洗い出す操作です。特に正典地名註釈プロジェクトのように、複数の比定説が並立しうるテーマではこの仕組みの恩恵が大きいと考えています。ただし自動修正はさせず、レポートを人間が確認してから反映する形にしています。
③ index.md / log.md
index.mdは「今何が存在するか」を一覧できる静的なカタログ、log.mdは「いつ何を取り込んだか」を記録する時系列ログです。Dataviewによる動的な集計とは別に、この2つの記録を残すことで、後から作業履歴を振り返りやすくします。
事実確認を組み込んだ運用に調整
元の考え方は「AIが全自動で書き換え続ける」ことを前提にしていますが、書誌情報や引用、翻訳者名など、正確性が特に重要な分野を扱う以上、そのままは採用しませんでした。代わりに、Coworkが作成・更新したノートには必ずreview-status: pendingを付与し、人間が事実確認を終えたものだけをconfirmedに切り替える、という一段階を挟む設計にしています。既存ノートと矛盾する新情報が見つかった場合も、Coworkには「両論併記して矛盾がある旨を注記する」ところまでを行わせ、実際にどちらが正しいかの判断・書き換えは人間が行います。
運用の場所分け
出来上がった仕組みは、単一の場所で完結するのではなく、3つの場所を使い分ける形になります。
- Cowork:Ingest(新規資料の取り込み)とLint(定期健康診断)を実行する、自動化の実行役
- Obsidianアプリ:MOCやグラフビューを見ながら考える、Coworkが作った内容をレビューする、自分の考察を直接書く場
- Claude Pro チャット:Vaultの内容を踏まえて相談する、執筆の壁打ちをする場(=Query操作)
機械的な作業はCoworkに寄せ、「読む・確認する・考える」は人間の手元に残す、という切り分けです。
CLAUDE.mdの自動読み込みについて
CoworkやClaude CodeはVaultのルートに置かれたCLAUDE.mdを自動的に読み込みますが、Claude Proの通常チャットにはその仕組みがありません。そこで、Claude Projects機能を使い、CLAUDE.mdの内容をProjectの知識として事前登録しておくことにしました。これにより、そのProject内でのチャットは毎回手動で指示し直さなくても、Vaultの運用ルールを踏まえた状態で会話が始まります。
ここまでの整理
- 自動化・低コスト・更新のしやすさの3条件を運用設計の判断基準に固定
- Claude Cowork(Proプランで利用可能)を自動化の中核に据える
- Inboxフォルダ+バッチ処理で、新規資料の取り込みを「置くだけ」にする
- 「育つWiki」の考え方から、CLAUDE.md・Lint・index.md/log.mdを追加
- 事実確認のプロセス(review-status)を組み込み、全自動ではなく人間のレビューを必須工程として残す
- Cowork/Obsidianアプリ/Claude Proチャット(Project化)の3箇所を役割分担して運用する
次回は、いよいよ文献系(論文・ジャーナル・ブログ記事)のテンプレートの中身と、実際のIngestプロンプトの詳細を記録する予定です。

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