2026年7月1日にNetflixで配信が始まった『エノラ・ホームズ3』。ミリー・ボビー・ブラウン演じるエノラ、ヘンリー・カヴィル演じるシャーロックによるシリーズ第3作の評判を、複数メディアのレビューから整理してみます。
スコアで見る「シリーズ初の失速」
Rotten Tomatoesの批評家スコア(Tomatometer)は、公開直後の集計途中では60%台後半から70%の間で変動していましたが、最終的には批評家・観客とも70%前後に落ち着きました。これは第1作(91%)、第2作(93%)と比べて明確に低い数字で、シリーズとして初めて「Certified Fresh」(一定基準以上の高評価作品に与えられる認定)を逃す結果となりました。
数字だけを見ると「失速」ですが、70%という水準自体は決して悪い評価ではなく、各メディアの論調も「駄作」というより「賛否が分かれる佳作」といったトーンで一致しています。
舞台はロンドンからマルタへ
前2作のヴィクトリア朝ロンドンを離れ、本作の舞台はマルタ(1964年までイギリス植民地)に移ります。エノラがテュークスベリー卿との結婚を控える中、シャーロックが誘拐され、その捜索がイギリスの植民地支配の暗部へとつながっていく、という筋立てです。
パキスタンDawn紙のMohammad Kamran Jawaid氏は、この展開を「原作であるナンシー・スプリンガーの小説シリーズから外れたロマンス偏重の路線」と評し、「謎解きとウィットを犠牲にしている」と厳しく評しています。同氏は音楽面についても、前作までシリーズを支えてきたDaniel Pembertonのテーマ曲が使われていない点を惜しんでおり、監督・脚本・音楽のいずれも「及第点止まり(serviceable)」という総評でまとめています。
共通して語られる論点
Dawn以外のレビューを横断すると、いくつかの点で評者間の見解が一致していることが分かります。
ミリー・ボビー・ブラウンの好演は、ほぼ全てのレビューで共通して評価されています。Rotten Tomatoesの批評家総評は「物語は混乱気味で輝きも薄れているが、ブラウンの好演と軽快なアクションのおかげで成立している」とまとめており、これがシリーズを支える最大の要因であることに異論は少ないようです。
植民地主義批判とフェミニズムのテーマも、複数のレビューで指摘されています。ある登場人物が「自分はイギリス人だから優越している」とマルタの住民に告げる場面や、有色人種の登場人物が公共の場でエノラと並んで歩けず使用人を装わねばならない場面が描かれるなど、社会批評的な要素が前面に出た作りになっているようです。
モリアーティの性別転換キャスティング(Sharon Duncan-Brewster)については、評価が分かれています。Dawnは「凡庸な悪役」と切り捨てる一方、他のレビューでは「ブラウン演じるエノラとの化学反応」を評価する声もあり、この配役自体が賛否の分岐点のひとつになっているようです。
「woke」論争という現代的な受け止め方
RogerEbert.comのレビューは興味深い視点を示しています。第四の壁を破る演出やフェミニズム・植民地批判のテーマを「wokeすぎる」と感じる層には向かないと前置きしつつ、それ以外の観客には「痛快で楽しい作品」と好意的に評価しているのです。これは、原作小説自体が持つ社会批評的な性格(エノラが女性の自立や社会正義を体現するキャラクターであること)が、現代の文化的な分断の中でどう受け止められるかという、アダプテーション研究として興味深い切り口を提供しています。
まとめ
『エノラ・ホームズ3』は、原作の探偵小説的な謎解き要素を薄め、ロマンスと社会批評に軸足を移したことで、シリーズとして初めてスコアを落とす結果になりました。しかし各メディアの論調を総合すると、「失敗作」ではなく「路線変更によって評価が分かれた作品」と捉えるのが妥当なようです。ブラウンの演技という一貫した評価軸がありながら、謎解き重視かテーマ性重視かでシリーズの評価が割れるというのは、原作のナンシー・スプリンガー版とNetflix版の距離が、回を重ねるごとに広がっていることの表れとも言えそうです。
出典
Dawn「STREAMING: THE SERVICEABLE HOLMES」(Mohammad Kamran Jawaid、2026年7月19日)
Forbes「Enola Holmes 3 Rotten Tomatoes Reviews: Millie Bobby Brown Is Still On Top Of The Case」(Tim Lammers、2026年7月1日)
Forbes「Enola Holmes 3 Review: Why We Need More Enola」(Hannah Abraham、2026年7月4日)
RogerEbert.com「Enola Holmes 3 review」
Rotten Tomatoes「Enola Holmes 3」批評家総評
CBR/MovieWeb/Collider/ScreenRant/Yahoo Entertainment(Rotten Tomatoesスコア関連記事、各2026年7月)

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