2026年5月16日:IHoSEエピソード334:デイヴィッド・バークを偲んで

シャーロッキアン日記

デイヴィッド・バーク逝去の報を受け、ポッドキャスト「I Hear of Sherlock Everywhere(IHoSE)」が緊急エピソードを公開しました。通常回の編集作業中に訃報が届いたという経緯もあり、エピソード334は急遽、バークへの追悼特別号として収録・配信されたものです。
ホストのスコット・モンティさんが、「ジェレミー・ブレット シャーロック・ホームズ・ポッドキャスト(The Jeremy Brett Sherlock Holmes Podcast)」を主宰するガス&ルーク・ホルワルダ親子を招き、バークの人物像と遺産について語り合っています。バートは今回お休みとのことでしたが、クリップ分析を交えた充実した内容になっています。とてもよい回でしたので、少し振り返ってみたいと思います。

訃報をどう知ったか

ガスとルークは、訃報を「アニー(バーク夫人アンナ・コールダー=マーシャル)から直接聞いた」と語っていました。彼らが一週間後にイングランドへ渡航する予定があり、ご家族と連絡を取り合っていたところに知らせが入ったとのこと。

ガスは「完全な驚きとはいえなかった」と率直に述べています。以前のインタビューや、コンベンション向けに撮影されたメッセージ映像から、年齢と健康状態のことは察していたとのこと。それでも、「ヒーローはいつまでも生き続けると信じたい」という気持ちがあるから、報に接して衝撃を受ける人が多いのだと。

 

「常に1985年だ」 グラナダ・ファンにとってのバーク

「シャーロキアンは『時は常に1895年』と言うけれど、ブレット・ファンにとっては『常に1985年』と言えるかもしれない」とモンティが言うと、ルークが深く同意していました。DVDを再生するたびに、若くて活気に満ちたデイヴィッドとジェレミーの姿が映し出される。あの頃の二人は永遠に生きている。

ルーク自身は子供の頃にグラナダ版で育ち、後にバーク本人と実際に会うことができたと振り返ります。「インタビューをまとめて聞き返すと、会ったばかりで実際の姿を知っているはずなのに、やっぱり40歳くらいの若いバークが見えてしまう。それほど自分の中に刷り込まれているのだと思いました」

 

バーク宅でのインタビュー、おとぎ話のような一日

ガスとルークはかつて、バーク宅を訪ねて長時間のインタビューを行っています。エピソードの中でその体験談が語られていますが、ここが今回のIHOSEの特に聞きごたえのある部分といって良いと思います。

エージェントを通じた正式な手続きを経て実現したインタビューは、最初は数分から一時間ほどと言われていたそうです。ところが実際に自宅に伺うと、「今日は一日空けてある」と歓迎され、昼食をごちそうになり、池のほとりで一緒に飲み物を楽しみ、手製のブランコにまで乗せてもらったといいます。「牧歌的という言葉でも足りない。おとぎ話のようだった」という表現が、二人の口から繰り返し出てきました。

一方で、バーク自身は非常に緊張していたとのこと。「何も覚えていないと思う。あまりに昔のことだから」と話していたそうです。それでも、少し話しかければ記憶が溢れ出してくる。インタビューの終盤、彼が飲み物を取りに席を外した隙に、妻のアンナが「前の夜は眠れなかったのよ。でも今は別人みたい。うまくいって本当に嬉しそう」とそっと教えてくれたそうです。

なお、バークはわざわざ古い日記を引っ張り出して「予習」をしてきてくれており、さらには書き込みがびっしり入った自分用の「ベイカー・ストリート・ファイル」まで手渡してくれたそうです。これは、グラナダTVホームズシリーズを撮影するにあたり、ホームズ正典から留意すべき点をまとめたスタッフ用のファイルですが、出版もされています。古書でたまに出てますが、まだ入手できておらず、欲しい本リストの筆頭の一つです。

 

なぜ第2シリーズに戻らなかったのか

このエピソードでガスが語る、バークが番組を離れた経緯の説明も、シャーロキアンにとって貴重な証言です。

インタビューでは明確に「なぜ去ったか」を話したかったと言っていたそうです。その理由の核心は、ジェレミー・ブレット自身が「第2シリーズには戻らない。だから何を提示されても引き受けるな」とバークに告げていたことにあります。ブレットは当時、妻を亡くし、体調も精神も不安定な時期にありました。その言葉を真に受けたバークは、他の仕事を多数引き受けてしまった状況だったそう。理由もなく去ったと思われているかもしれないことを、ずっと気にしていたのだろう――と、ガスの口から静かに語られていました。

 

グラナダ版ワトソン像の再評価

番組の中盤では、グラナダ版の音声場面を取り上げながら、バークのワトソン像を論じています。エピソードごとのクリップが音声で流れるため、実際に耳で確認しながら解説を聞くことができます。

二人は、「私たちにとってバークは唯一のワトソン」——エドワード・ハードウィックは僅差で続く第2位だが、バークを超えるワトソンはいない、と。その理由として挙げられていたのが、従軍経験のある軍医であり、経験豊かな開業医でありながら、ホームズが謎を解くたびに目を輝かせる「少年のような驚嘆」でした。

スコットさんはバークの少年のような魅力と笑いのセンス、エレイの弾薬と歯ブラシを揃えて旅支度をする頼もしい友人、患者を気遣う医師、友人や依頼人の苦悩に寄り添う共感者、そして時としてホームズの言葉に傷つき、立ち直ろうとする姿を語りました。

「この13話を通じて、バークはワトソン像のまったく新しい基盤を作った」というルークの言葉は、おそらく多くの視聴者の感じ方と一致するでしょう。

 

締めくくりのクリップが語るもの

エピソードの最後は、バーク版の最終エピソード「最後の事件」における、ワトソンのモノローグが流れてきて締めくくられます。

「重い心でペンを取り、友人シャーロック・ホームズ氏を特徴づけた非凡な才能について、私が記録する最後の言葉を書くことにする。彼こそ私が知ったなかで最善かつ最も賢明な人物として、永遠に記憶されるであろう」

当初、バークは「ワトソンはただの平凡な人物だから」とオファーに乗り気でなかったそうです。それに対して妻のアンナが言った言葉が、「平凡な人物を演じるには、非凡な人物が必要」。この一言でバークがワトソン役を決めたとしたら、まさにアニーの言ったとおりになり、我々を魅了してくれましたので、感謝しかありません。

 

I Hear of Sherlock Everywhere エピソード334は、Apple Podcasts、Spotify、その他主要なポッドキャスト・プラットフォームから無料で聴くことができます。公式サイト ihearofsherlock.com でも公開されています。

ガスとルークが運営する「ジェレミー・ブレット シャーロック・ホームズ・ポッドキャスト」および彼らのインタビュー動画は sherlockpodcast.com でご確認ください。バーク本人へのインタビュー回(2022年公開)も必聴です。

 

アイキャッチ画像は本記事を元にAIが作成した画像となります。

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