紹介するのが遅れてしまいましたが、英国ポーツマス市が市制100周年(Portsmouth100)を記念して展開している一大アートイベント「Pride of Portsmouth」が、7月13日(月)から始まっています。市内各所に45頭のライオン像(と1頭のユニコーン)が設置され、9月13日までの2か月間、市民や観光客がアプリを使って巡る「宝探し」形式のトレイルが開催されています。
この中に、シャーロキアンなら見逃せない一頭がいるとのこと。
「Purrlock Holmes」——221Bの扉に座るホームズ獅子
ザ・ポーツマス・ディスティラリー(The Portsmouth Distillery)がスポンサーとなっているライオン像「Purrlock Holmes」は、その名の通りシャーロック・ホームズをモチーフにした一頭です。
制作者のClaire Havell氏は、コナン・ドイルがポーツマスで暮らし、開業医として働いていた時期にホームズを生み出したことに着想を得たと語っています。
デザインの特徴は次の通りです。
- 茶色のチェック柄コートとネクタイをまとった姿
- ライオンの頭部にある丸みを帯びた造形を、そのまま鹿撃ち帽(ディアストーカー)に見立てている点
- 台座はベイカー街221Bの扉を模したデザイン
Havell氏はエスケープルーム(謎解き脱出ゲーム)のパズルデザイナーとしての経験を持ち、その知見を活かして像の中に虫眼鏡のモチーフを隠し、足跡の模様から「探す」体験がスタートする仕掛けを施している
謎解き好きのデザイナーがホームズをテーマに選び、鑑賞者自身に「観察」と「推理」を促す仕掛けを組み込んだという点は、まさにホームズ的な遊び心と言えるでしょう。
もう一頭——「Cushty」に隠されたオマージュ
トレイル開幕を報じるThe News(portsmouth.co.uk)の記事では、別の一頭「Cushty」(ヒルシー・バスステーション設置、First Busスポンサー)についても触れられています。記事によると制作者のDaisy Barker氏はポーツマス出身のアーティストで、ポップアートらしい鮮やかなデザインの中に、ポーツマス方言の”dinlo”の文字とともに、コナン・ドイルとシャーロック・ホームズへの「さりげないオマージュ」を仕込んだと述べています。こちらは全体としては市への「ラブレター」をテーマにした作品で、ホームズ要素はその中の一つのディテールという位置づけです。
ポーツマスとコナン・ドイル
ポーツマスは、コナン・ドイルが1882年から1890年にかけて開業医として暮らし、後にシャーロック・ホームズという人物を生み出す土壌となった土地です。「緋色の研究」もこの時期に執筆されています。市制100周年という節目の記念イベントに、こうした形でホームズへのオマージュが組み込まれたことは、地元にとってのドイル=ホームズという遺産の重みを改めて示していると言えそうです。
トレイルは9月13日まで開催中で、各ライオンの位置情報は公式サイト(prideofportsmouth.co.uk)や市内図書館で配布される無料マップから確認できます。
私も昨年9月、ロンドン・シャーロック・ホームズ協会のイベントでポーツマスを訪れました。ホームズフェスタやシャーロック・ホームズ・パブ、そして充実したホームズコレクションなど、ホームズゆかりの見どころが数多くあり、英国でロンドンに次ぐホームズの聖地の一つだと感じています。Purrlock Holmesだけを目当てに訪れるのではなく、ドイルの診療所跡や作品ゆかりの港、ホームズコレクションなどとあわせて巡れば、ホームズの世界を存分に味わえる旅になるでしょう。

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