2026年6月12日:『バスカヴィル家の犬』が爆笑コメディに? 米マディソンで舞台版『Baskerville』上演

シャーロッキアン日記

『バスカヴィル家の犬』といえば、正典のなかでも最も緊張感のある長編小説のひとつです。ダートムーアの霧、魔犬の伝説、よみがえった魔犬——。しかしそのストーリーが、抱腹絶倒のコメディ劇に生まれ変わったら、どうなるでしょうか。

アメリカ・ウィスコンシン州マディソンのバートル・シアター(Bartell Theatre)では、現在その舞台が上演されています。演目は 『Baskerville: A Sherlock Holmes Mystery』(ケン・ラドウィグ作)。6月5日(金)から13日(土)まで、全6公演となっています。

作家ケン・ラドウィグ

この劇を書いたのは、アメリカの劇作家ケン・ラドウィグ(Ken Ludwig)。

ペンシルベニア州ヨーク生まれで、ハーバード・ロースクールとケンブリッジ大学(トリニティ・カレッジ)でも学んだという異色の経歴の持ち主。ブロードウェイ初作品『Lend Me a Tenor』(1989年)でトニー賞を獲得し、その後『Crazy for You』など数々の作品でトニー賞やオリヴィエ賞を受賞した、現代アメリカ演劇を代表するコメディ劇作家のひとりです。

30か国以上、20以上の言語で上演されてきたその作品群のなかに、このホームズ劇もあります。

なお、ラドウィグはホームズに限らずミステリへの造詣も深く、アガサ・クリスティーの『オリエント急行の殺人』の舞台化を手がけたほか、『The Game’s Afoot』というホームズを題材にしたコメディ・ミステリーも手がけています。

ミステリと喜劇を融合させる巧みさこそが、彼の作風の大きな特徴、と言えるでしょう。

舞台の内容:40人以上を、数人の俳優が演じる

『Baskerville』は2015年1月、ワシントンD.C.のアリーナ・ステージとプリンストンのマッカーター・シアターの共同制作で初演されました。

物語の骨格は正典の『バスカヴィル家の犬』そのままです。バスカヴィル家の男性相続人が謎の死を遂げ、ホームズとワトスンはダートムーアの荒野へ向かいます。しかしこの舞台では、ミステリを解くスリルよりも、笑いが前面に出ます。

最大の特徴は、少人数のアンサンブルが40人以上のキャラクターを演じ分けるという構造です。早替わりの衣装、変装、おかしなアクセント。舞台上では次々とキャラクターが切り替わり、観客は笑いながらもストーリーを追うことになるようです。

バートル・シアターの公演ではMichelle DaytonとSteve Nollのダブル演出体制が取られており、「スラップスティックと探偵劇の融合」を掲げています。

バートル・シアターとは

会場となるバートル・シアターは、ウィスコンシン州マディソンのダウンタウン、East Mifflin Streetにある劇場です。アメリカで最も歴史ある協働型舞台芸術施設のひとつで、マディソン・シアター・ギルド、マーキュリー・プレイヤーズ・シアター、ステージQ、マディソン・シェイクスピア・カンパニーなど複数の劇団が入居する共同運営の場として知られています。

今回の公演はバートル・シアター自体の「ベネフィット公演」(支援興行)として位置づけられているようです。

マディソンはウィスコンシン大学を擁する大学都市で、演劇文化も根強く、こうしたコミュニティ劇場が地域の文化を支えています。

 

 

魔犬に震え上がるはずの『バスカヴィル家の犬』が、早替わりと変装の連続で笑いに包まれる――。ホームズ作品は映画やテレビだけでなく、こうした舞台ならではの解釈によっても新しい魅力を見せてくれます。もし近くに住んでいたら、ぜひ一度観てみたいと思わせる公演です。

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