2026年8月20日:ホームズの血を継ぐ者たち――『マドモアゼル・ホームズ』新シーズンと「子孫もの」パスティーシュの系譜

シャーロッキアン日記

『マドモアゼル・ホームズの捜査日記』のシーズン2が8月20日からU-NEXTで配信されるという告知が目に留まりました。主人公シャルリー・ホームズは、ホームズを曽祖父に持つ警官という設定です。この「子孫」という切り口、実はシャーロキアン・パスティーシュの中でもわりと息の長い系譜を持つテーマだと気づき、少し掘り下げてみることにしました。

『マドモアゼル・ホームズ』というフランス製パスティーシュ

本作は2024年4月、フランスのTF1で放送が始まったシリーズです。舞台はナント。ナントとペイ・ド・ラ・ロワール地域で60日近くかけて撮影されたとのことで、地方局主導の地域密着型プロダクションという色合いも感じます。

主人公シャルリー・ホームズは、祖父と同居する36歳の内気な警官。ある日交通事故に遭ったことをきっかけに、抑えていた感情と推理力が一気に開花し、曾祖父譲りの観察眼で難事件を解決していくようになります。相棒は研修医のサミー・ヴァテル。彼女にとっての“ワトスン役”です。

シーズン1は全6話構成で、第4話のタイトルが「Baker Street」、最終話が「Le dernier problème(最後の事件)」だったりと原典へのオマージュが話数タイトルにも仕込まれているのが分かります。初回放送は500万人超を集める好調ぶりで、これがシーズン2製作の決め手になったようです。

「子孫もの」という系譜

ホームズを実在の人物として扱い、その子孫が現代(あるいは後の時代)で探偵稼業を継ぐという枠組みは、実はドラマやパスティーシュの中でも一つの型として定着しています。今回調べた範囲では、少なくとも三つのドラマ作品が比較対象になりそうです。

まず、カナダのYTVで1996年から放送された『The Adventures of Shirley Holmes』。主人公シャーリー・ホームズはホームズの傍系子孫にあたる少女で、カナダの架空都市レディントンを舞台に事件を解決していきます。相棒ボー・サウチャックはワトスン役、ライバルのモリー・ハーディはモリアーティのもじりですね。なお、この「傍系子孫」の続柄表記は資料によってばらつきがあり、grand-niece(姪孫)、great-grandniece、great-great-nieceのいずれの表記も見つかりました。作品内でどこまで厳密に設定されているのかは、一次資料に当たり切れておらず未確認です。

次に、2025年にThe CWで放送が始まった『Sherlock & Daughter』。こちらはホームズ自身が主役として登場し、ある日突然「娘」を名乗るアメリア・ロハスと出会うという設定です。舞台は1896年のロンドン。ホームズ本人が存命という点で、「子孫」というより「隠し子」ものに近い構造を取っています。

そして『マドモアゼル・ホームズ』は、ホームズ本人はすでに世を去った存在として扱われ、曾孫のシャルリーが現代フランスで血を継ぐという設定です。

血縁の距離と“ゲーム”の扱い方

こうして並べてみると、血縁の距離によって作品の性格が変わっていくのが見えてきます。『Sherlock & Daughter』はホームズ本人が現役で登場するため、原典のキャラクター(モリアーティ、ワトスン夫妻)がそのまま動きます。一方『Shirley Holmes』や『マドモアゼル・ホームズ』は、ホームズはあくまで一族の伝説的な先祖という位置づけで、舞台も時代も国も原典から大きく離れています。

ホームズ・ワトスンを実在の人物として扱ういわゆる「ゲーム」の枠組みで見ると、この三作はいずれも一族の系譜という形でゲームを引き継いでいる点が共通しています。ただし『Shirley Holmes』はカナダ、『マドモアゼル・ホームズ』はフランスと、血統が国境を越えて広がっていく発想も面白いところです。子孫を通じて原典の世界観を海外に「輸出」する装置として機能しているとも読めそうです。

今後の課題

今回はざっと三作を並べただけですが、この「子孫もの」を切り口にすると、ジェンダー変換パスティーシュ(『ミス・シャーロック』など)との比較や、日本国内での子孫もの受容例の有無なども気になってきます。『マドモアゼル・ホームズ』のクリエイター側が原典をどこまで意識しているのか、公式コメントはまだ確認できていないので、これは今後の宿題にしておきます。

シーズン2は8月20日からU-NEXTで配信とのこと。まずは本編を追いかけながら、また気づいたことがあれば書き足していきたいと思います。


参考

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