スペイン南部アンダルシア州のヘレス・デ・ラ・フロンテーラで、同国初となるヴィクトリア朝文学専門フェスティバル「フェスティバル・リテラリオ ヘレス・ビクトリアーノ(Festival Literario Jerez Victoriano)」が、2026年6月5日(金)・6日(土)の2日間にわたって開催されるというXのポストを見かけました。
Sherlock Holmes y la literatura victoriana se dan cita en Jerez
La localidad gaditana acoge el 5 y 6 de junio el Festival Literario Jerez Victoriano
Uno de los momentos más singulares será la Cata Literaria, una experiencia que relacionará el vino de Jerez con autores como… pic.twitter.com/wgDjFoQsW4
— CanalSurNoticias (@CSurNoticias)
地元アンダルシアの公共放送Canal Sur(カナル・スール)も取り上げ、シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝文学がヘレスに集結するとして注目を集めているようです。
(最近は、Xも勝手に翻訳してくれるので情報が入りやすくていいですね。)
主催はシャーロック・ホームズ文学協会
このフェスティバルを主催しているのは「ソシエダ・リテラリア・シャーロック・ホームズ(Sociedad Literaria Sherlock Holmes)」、日本語にすれば「シャーロック・ホームズ文学協会」でしょうか。
同協会の共同創設者であるマルガリータ・ロサーノ(Margarita Lozano)とアドリアン・オテロ(Adrián Otero)が2年以上にわたって構想を温め、ヘレス市役所の後援を得て実現しましたとのことです。
会場は市内の歴史的建造物「パラシオ・デ・ビジャパネス(Palacio de Villapanés)」で、すべてのプログラムがここで行われます。入場は基本的に無料(定員制)で、一部のイベントのみ事前メール申込が必要です。
ヘレス市文化担当のフランシスコ・スリータ氏は、このフェスティバルが「市の文学カレンダーを豊かにし、ヘレスと英国文化との歴史的なつながりを強化するもの」と評価しています。
ヘレスのワインであるシェリー酒は古くから英国に輸出されてきた歴史を持ち、ヘレスと英国の縁は深いものがあります。正典でも、ホームズが飲んだ描写はないのですが、「花嫁失踪事件」では、シェリー酒を飲んだホテルのレシートが出てきたり、「グロリア・スコット号」でも囚人達がシェリー酒を飲もうとした描写がありました。
プログラムの見どころ
2日間のプログラムは充実した内容で、講演・円卓会議・書籍発表会・夜の文学散歩と多岐にわたります。
6月5日(金)――開幕とスチームパンク
午後5時の開幕式に続き、まずはスペインの人気作家フェリクス・J・パルマ(Félix J. Palma)による講演「ヴィクトリア朝とスチームパンク」が行われます。彼は時間旅行をテーマにしたヴィクトリア朝スチームパンク小説の書き手として知られており、このテーマにうってつけの登壇者です。
午後7時には、コミック『シャーロック・ホームズ対アルセーヌ・ルパン』(ノルマ・エディトリアル刊)の発表会が行われます。ホームズとルパンという2大キャラクターの競演は、スペインのファンにも人気の題材です。
午後8時には、マルガリータ・ロサーノ著『ヘレスの文学散歩』(ロードアイランド社刊)の発表会。そして午後9時からは、申込制の夜間文学ウォーク「ヘレス・オクルト(Jerez Oculto=隠れたヘレス)」が開催されます。ヴィクトリア朝の雰囲気漂う歴史的な街並みを夜に歩くというのは、なんとも魅力的な企画です。
6月6日(土)午前――女性・コナン・ドイル・カタ
午前10時からは円卓会議「ゴシックで暗い:ヴィクトリア朝の女性たち」が開かれ、ブランカ・ガルシア・デ・アルボレヤらが参加します。ヴィクトリア朝の文学における女性像は、近年のシャーロキアン研究でも重要なテーマといえるので、興味深いセッションです。
午前11時は、エドゥアルド・カアマーニョ(Eduardo Caamaño)による講演「アーサー・コナン・ドイル:その遺産と文化的展開」。コナン・ドイルの一次資料や伝記的研究に基づいた考察が披露されるようです。
午後1時からは、このフェスティバル最大の企画のひとつ、「カタ・リテラリア(Cata Literaria=文学テイスティング)」です。テーマは「ヘレスのワインと文学」で、シェリー酒をディケンズ、エドガー・アラン・ポー、コナン・ドイルといった作家と結びつける体験型イベント。
ワインのテイスティングと文学を組み合わせるという発想はヘレスならではといえるでしょう。なお、こちらは事前申込制となっています。
6月6日(土)午後――図像史・悪役・閉幕講演
午後5時からは「シャーロック・イラストレイテッド:ヴィクトリア朝の版画から宮崎駿のアニメまで」と題した講演が行われます。
日本のシャーロキアンとしては特に注目したいセッションです。宮崎駿監督の『名探偵ホームズ』(1984–85年)がここで取り上げられるというのは、ホームズの受容史という観点から見ても重要な評価といえます。
午後6時は「ホームズ正典の悪役たち」と題した講演(ホアン・カルロス・モンロイ・ヒル)。そして午後8時、フェスティバルの締めくくりはマクシモ・プラデーラ(Máximo Pradera)による閉幕基調講演「シャーロック・ホームズになった男と大衆文化における神話の永続性」です。
ホームズ神話が現代文化にどう生き続けているかを論じるというテーマは、まさにシャーロキアンの中核的関心事といえるでしょう。
常設展示
会期中はずっと、ミニチュアアーティスト集団「ラ・ビブリオテカ・デ・リリプット(La Biblioteca de Liliput)」によるジオラマ・ブックヌーク展も開催されています。古い図書館や文学的な空間を精巧なミニチュアで再現した作品群で、ヴィクトリア朝的な雰囲気を視覚的に楽しめる展示です。
スペインのシャーロキアン・コミュニティ
このイベントを主催するソシエダ・リテラリア・シャーロック・ホームズは、スペインにおけるシャーロキアン活動の中心として活動してい様子。また、フェスティバルに合わせて文化誌「ラ・ストランド(La Strand)」の創刊号も発表されています。ホームズゆかりの雑誌名をスペイン語で出そうという心意気を感じます。
世界各地のシャーロキアン組織とも通ずる、クラブ活動・研究・出版を組み合わせたこのフェスティバルの形は、スペインでもこれほどの動きが育ちつつあることを示すものとして、国際シャーロキアン・コミュニティにとっても注目に値します。
英国との歴史的なつながりを持つこの街で、ヘレスのワインをコナン・ドイルや詩人ポーと結びつける「文学テイスティング」が行われるというのは、一度は体験してみたい企画です。
スペインのシャーロキアンたちがこれほどの規模で動いているということは、ホームズ研究の国際的な広がりを改めて感じさせてくれます。今年が大成功に終わり、来年以降も継続開催されることを願っています。
参考リンク
Canal Sur記事:Sherlock Holmes y la literatura victoriana se dan cita en Jerez
ヘレス市公式:Festival Literario Jerez Victoriano
Jerez Sin Fronteras(詳細プログラム):Festival Literario ‘Jerez Victoriano’ 2026


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