『憂国のモリアーティ』最新刊の第21巻が発売になっていましたので、さっそく書店で手に取りました。
本作はすでに第一部を完結させ、前巻から第二部に突入しています。
第一部では、シャーロック・ホームズの正典の世界観を尊重しつつ、その背後にある社会構造や人間模様を雄弁に描き出し、
「正典の裏側にあるもうひとつの物語」を見事に構築していました。
主人公・ウィリアム・モリアーティと宿敵ホームズの関係性は、単なる敵対ではなく、互いの知性と理念を映し出す鏡のような「共鳴」として描かれています。
その関係性を、正典の設定を巧みに活かしながら再解釈している点が、シャーロッキアンとしても非常に魅力的です。
『憂国のモリーアティ』のシャーロッキアン的魅力
本作では、正典のエピソードを随所に織り込みつつ、独自の物語を積み重ねることで、“ホームズの事件群を包み込む大きな歴史のうねり”を描き出しています。
一つひとつの事件は見事にリンクし、英国の階級社会や国際政治の陰に潜む巨大な構図が徐々に姿を現していきます。
登場人物たちは、原作の設定を壊すことなく、むしろその余白を広げるように再構成されており、そこにジェームズ・ボンド的な世界観が加わっているのですが、意外とぴったりはまっていて、自然と融合した世界観を生み出しています。
21巻で扱われる事件
21巻は前半では「まだらの紐」、後半は「技師の親指」事件がモチーフとなっています。
基本的には正典と同じ流れをたどるのですが、正典で描かれていない描写も多くあり、物語に深みを持たせています。
単純な事件の背景に、国際政治も絡んだ、大きな事件が隠されており、各事件を通じて、その大きな事件に迫っていくというところがとても巧み。
正典をどうアレンジしてくれるのか、毎回楽しみにしています。
第二部も始まったばかりなので、まだまだ序盤。今後どのような物語に発展していくのか、そこでウィリアムとシャーロックがどのような活躍を見せてくれるのか、期待しかありません。



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