日本語の論文検索サイトであるJ-STAGEではメールによるアラートがなさそうということを書きましたが、Google Scholarで日本語で登録すればいいことに気がつきました。
試しにGoogle Scholarでシャーロック・ホームズで検索してみたら、結構たくさんの論文が出てきました。
上の方にあった論文で面白そうなのを読んでみることに。
それが「シャーロック・ホームズはパブリックドメイン」というタイトルのもの。正確には情報管理誌(Vol. 56, No. 11, 2014)というジャーナルの「情報界のトピックス」というコーナーの中の一つの記事ですね。
「シャーロック・ホームズはパブリックドメイン」
ざっくりと以下のようなことが書かれていました。
判例の紹介
米国イリノイ州北部地区連邦地方裁判所で、2013年12月23日に出された判決で、1923年以前に出版された4編の長編小説および46の短編小説についてはパブリックドメインであり、誰でも自由に利用可能とされた。
ただし、1923年1月1日以降に出版された10編の短編小説に関しては、これらに登場するキャラクター特性や場面設定の利用には、コナン・ドイルの相続人が所有する Conan Doyle Estate Ltd.(以下「Estate」)の承諾が必要という判断。
Estate の立場/背景事情
Estate は、ホームズやワトソンの性格・物語構造すべてが著作権の保護対象と考えており、新作/映像化作品等に対してライセンス料を請求してきた経緯がある。
ホームズパスティーシュ集を編集したLeslie S. Klinger 氏がライセンス料を請求されたことが契機となり、2013年2月にEstate を相手取った訴訟を起こした。彼は「ホームズやワトソンに関する性格特性要素はパブリックドメインにある」と主張。
判決の意義と限界
判決は、既存のライセンス契約には影響を与えないという Estate の主張を変えていないという点を強調。つまり、判例があるものの、すべての利用シーン・国際的な場面で完全に自由に使えるとは限らない、という状況。
やはり内容はKlinger氏が起こした裁判のことでした。
当初この裁判のことを知ったときは、ホームズのすべてがパブリックドメインとして自由に使ってもよいということになったのだと思ってたのですが、細かく見ると100年の間守られる権利が残る(当時)最後の10編固有の要素についてはドイル財団の承諾が必要だったんですね。
クリンガー氏も「ホームズとワトソンの名前、バックグラウンド、パイプ、ベーカー街221B、モリアティ教授など、1923年以前の著名な要素はすべて自由に使える」と表明しつつ、すべてのキャラクター要素が完全に自由ではなく後期10作特有の要素については配慮が必要としていたようです。
とはいえ、それも2023年ですべてパブリックドメインになっていますので、今やドイル財団の承諾は必要なくなったわけです。
ドイル財団がどのように権利を行使してきたかは、こちらの本を読んでみるとよく分かると思います。
冒頭の写真は、ローリー・キングとレスリー・クリンガーによるパスティーシュ集『In the Company of Sherlock Holmes』です。このパスティーシュの出版に当たりドイル財団から許諾を求められたのが裁判を起こしたきっかけでした。
こちらの本、ローリー・キングさんのサイン入り。アメリカの本屋のイベントに来られたときに販売されたもので、私はもちろん行けなかったのですが、申し込んだら名前入りでサインをしてくれたものを送付してくれました。。



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