今年1月、ニューヨークの BSIウィークエンド に参加して以来(さらにレスリー・クリンガー氏にお会いして以来)、私はアメリカのシャーロッキアンの世界に一層惹かれるようになりました。
それ以降、
• Baker Street Journal をより熱心に読むようになり、
• Podcast番組 I Hear of Sherlock Everywhere や Trifle を毎回チェックし、
• アメリカのシャーロッキアンの著作を読み、
• 海外のファンや研究者ともネット上で交流する――
そんな日々を過ごしています。
新しい情報に触れるたび、シャーロッキアンの世界が国境を越えてつながっていることを実感します。
いろいろと新しい情報に接することも多いのですが、そういえば、ちょっと前にアメリカのシャーロッキアン、ドン・ホブスさんが来日して、JSHC全国大会で講演をしてくれたことを思い出しました。
そして当時のメモを見てたら、意外なことに気がつきました。
ロナルド・ドゥ・ワールのホームズ書誌
ドゥ・ワールの「The World Bibliography of Holmes and Dr Watson」と言えば、ホームズについて知りたい、研究したい場合の最も基礎的な資料の一つとして知られています。
いわゆる書誌というものですが、書誌というのは「あるテーマや著者、または分野に関する文献(本・雑誌・論文など)を、体系的に整理・一覧化したもので、どんな資料が、いつ・どこで・誰によって・どのように出版されたかを記録したリスト」のことです。
1979年の刊行時点までに発表された本や雑誌だけでなく、演劇・映画・ラジオ・テレビといった関連資料まで網羅されており、ホームズ研究の出発点として欠かせない存在です。
私自身も、イギリス留学中にホームズゆかりの地を訪れる際、レスリー・クリンガー氏の新詳注版全集とともにこの書誌を購入した記憶があります。
コレクターとして有名なジョン・ベネット・ショー氏
一方、世界的なホームズ・コレクターとして知られるのが ジョン・ベネット・ショー(John Bennett Shaw) 氏。
名前は以前から知っていましたが、一昨年の『ホームズの世界』第46号「コレクション特集」で改めてその偉業に触れることができました。
彼のコレクションがミネソタ大学のホームズコレクションの礎となっているということは何となく知っていましたが、1月にあったミネソタのScion Societyの方からも話を聞いて、いつか行ってみたい場所の一つになっていました。
二人の繋がり
私の手元にある「The World Bibliography of Holmes and Dr Watson」が、かなり古ぼけたものであるためか(冒頭の写真がそれです)、ドゥ・ワール氏というのは、かなり昔の人というイメージでした。
一方のベネット・ショー氏については、JSHCでBSIのUさんから、ご自宅に伺った話なども聞いていましたので、かなり現代の人という印象です。
ところが、BSIのホブスさんの日本での講演メモをチェックしていたら、ドゥ・ワール氏は、ベネット・ショーコレクションに感銘を受けて書誌を作ろうと思い立った、というのです。
まったく別時代の人物と思っていた二人が、実は互いに知り合いであり、さらに影響し合っていたというのは、個人的に大きな発見でした。
こうして少しづつBSIやシャーロキアンの人間関係が解明されていく(自分にとって、ですが)というのは新鮮な体験です。
同時に感じるのは、「もっと早くこの世界に飛び込んでいれば」という少しの悔しさ。
かつてアメリカに住んでいた頃に、もう少し深くこの世界に関わっていれば――と思うこともあります。多くの偉大なシャーロッキアン達が、「ライヘンバッハの滝の向こう側」に旅だってしまっていて、もう直接会うことは叶いません。
そんなことを考えると、どこかに行きたいとき、誰かと会いたいときにはすぐに行動をするが、やはり重要だと思えてきます。いろいろとできない理由を探さずに、腰を軽くして動き回れたらと思います。



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