昨晩は、というか深夜ですが、ロンドン留学中からサポートしているプレミアリーグのアーセナルの試合。ホーム初戦ということもあり見逃せない一戦です。新戦力も躍動し、5−0で勝利を収めることができました。
プレミアファン共通の悩みですが、日本での放映時間が夜遅いことが多く、翌日は寝不足になります。幸い、深夜1時半からと遅かったものの、今日は日曜で少し朝寝坊もできたので助かりました。
ホームズ名所巡りガイド
さて、ホームズ名所巡りについては引き続きあれこれと考えています。
ホームズに登場する場所と言っても、実際行って見るとただの通りだったりします。ですので、紹介の仕方が重要だろうな、とは思うものの、ターゲットによってもだいぶ変わるはず。
そもそも、どんな人を読者として想定するのか、はまず最初に設定しなければならない重要な要素となります。
なんとなくイメージにあるものとして2冊ほどレビューしてみました。
1冊目は『Hot on the Scent−A Visitor’s Guide to the London of Sherlock Holmes』という本。こちら昨年の『ホームズの世界』でも紹介したのですが、ホームズ要素がかなり濃いガイド本。
構成としては地域ごとのショートツアーが35本紹介されています。一つ一つのツアーの書き方としては、まず歩く対象の地域の地図(著者の手書き?風)、タイトルはAdventure Oneからはじまるもので、次に歩いてたどっていく場所が並べて書かれています。その後、関連する正典の引用が短く掲載されて本編となります。本編は基本は文章で、場所を紹介しながらホームズ正典での記載などを紹介しています。そして一ページに1枚程度の写真、たまに正典に関するコラムがある、といった感じです。
例えば最初のAdventureの出だしはこんな感じ。ChatGPTで翻訳してみました。
冒険その1
ロンドン大学、マレット・ストリート — ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン、ガワー・ストリート — ジェレミー・ベンサム — ユニヴァーシティ・カレッジ病院、ガワー・ストリート — ジェレミー・ベンサム・パブ — UCL生物科学ビル(D.M.S. ワトソン図書館)— ディロン大学書店 — ロンドン大学組合、マレット・ストリート
「1878年に私はロンドン大学で医学博士号を取得した。」
こうしてジョン・H・ワトソン医学博士、元インド陸軍軍医は不朽の物語を開き、我々もシャーロック・ホームズ氏とその忠実な記録者によるロンドンの冒険旅行を始めなければなりません。
現在のロンドン大学(マレット・ストリート、モンタギュー・プレイスの裏、 大英博物館の背後)は1930年代に建てられたもので、したがって明らかに正典的な興味の対象には新しすぎますが、チャールズ・ホールデンによる高さ210フィートの上院議事堂を擁し、そこには大図書館が収められ、今ではロンドンのスカイラインにおけるおなじみのランドマークとなっています。
私たちが求めているのは、ワトソン博士の「ロンドン大学」であり、現在ではユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンとして知られています。この大学はマレット・ストリートから1ブロック西、ガワー・プレイスとトーリントン・プレイスの間に位置しています。この非宗派の学術機関(つまり、オックスフォードやケンブリッジから追放された非英国国教徒のために設立されたもの)の基礎は、1827年4月30日、サセックス公爵によって据えられました(ホームズの最終的な隠棲先を思い起こさせる人物です!)。そして1828年10月1日に開校しました。
1878年、ロンドン大学は女性を学位候補者として受け入れた最初の英国高等教育機関となり、おそらくレックス・スタウトの異端的な1941年の記事「ワトソンは女性だった」を正当化することになったかもしれません。ワトソン博士に学位を授与した医学試験委員会もこの巨大な建物に入っていました。
現在もなお健在なのは、1829年に完成したコリント式ポルチコを持つ堂々たるドームとドデカスタイル(翻訳:12本の柱を持つこと)です。1954年の修復、1985年の大掃除、そして現在の補修作業により、この歴史的な建造物の保存が進められています。全長400フィートの列柱ファサードは西向きなので、良い写真を撮るためには午後に訪れる必要があります。広角レンズを強くお勧めします。これがナショナル・ギャラリーの兄弟建築(いずれもウィリアム・ウィルキンス設計)であることに同意するでしょう。
こんな感じで、街歩きを文章で書いていくやり方です。気になる場所について、この本からピックアップして、書かれている通りに歩きながら解説を読む、というのがよい使い方のように思います。もちろん、現場に行かなくても読むだけでも楽しい読み物でもあります。
次に参考にしたのは『地球の歩き方 ジョジョの奇妙な冒険』。
こちらはご存じの方も多いと思いますが、あの有名旅行ガイド『地球の歩き方』シリーズのうち、従来の国や都市のシリーズではない、特定テーマの歩き方シリーズの一つ。
構成としては地球の歩き方を踏襲していますので、各場所の紹介は短い説明に基本情報である住所・電話、開いている時間、休日、交通手段、URLが付いているというもの。多くの紹介に小さな写真も付いています。
これに加えて、見開きで何らかの場所について書かれていたり、コラムがあったりとリファレンスとしての仕様を基本としつつ、読み物としてのパートも充実している全体構成となっています。
ジョジョの場合、どのような場所が紹介されているか気になったので確認してみたところ、ジョジョに登場する実際にある場所の紹介と、ジョジョにしか出てこない(場所が特定されていない場所)が混ざり合っていることが分かります。
で、どちらを目指すのかということですが、イメージとしては文章中心の本ではなく、ガイドブック+読み物ということでいうと、やはり地球の歩き方が近いような気がしています。読み物とかコラムとかで読ませるパートも含めつつ、実際の訪問の際にも使えるもの。そしてある程度写真があって、ほぼ全ページカラー、というイメージです。
ただ、『歩き方』のフォーマットだと、各場所の紹介が少し短いかな、という気もしていますので、うまくメリハリが付くとよいのかもしれません。
そういう意味では、手元にあった『ロンドンでしたい100のこと』のフォーマットも近いような気がしています。こちらは100カ所の紹介なのですが、概ね1ページに一つの場所、写真がメインで載せられていて、紹介文がページの半分、基本情報は欄外にちょっと、というのが基本で、たまに見開きにして写真ページを設けたりしています。
デザイン的なものはもしかすると内容が固まってからになると思うので、まずは紹介する場所を選定して、紹介文を書いてみて、必要な写真を選んで、ということで書き始めてしまうのがよいのかもしれません。
まずは紹介するフォーマットを探りつつ、ホームズ旅ユニット「シャーロック・ホームズ・トラベラーズ」の皆さんにも相談してみようと思います。さらに広く執筆者を募る、というのもあるのかもしれません。まずは、かつて盛んだった『ホームズの世界』おまけ本を目指し、完成度によっては自費出版、さらには商業出版というところまで行けるととても嬉しい。
ちなみにですが、『ロンドンでしたい100のこと』は、表紙にホームズの姿をしたキャラクターが描かれているのと、スピーディーズカフェ(BBC『シャーロック』に登場)が紹介されているので、ホームズ案件ということで購入していました。
ソア橋のトリック
かなり昔なのですが、まだニフティサーブの掲示板が隆盛だった時代、ソア橋のトリックが成立し得るかどうかについて議論した記憶があります。
当方としては、純粋に科学的に可能かどうか議論していたつもりだったのですが、ある方はホームズ正典が正しいことを前提としたシャーロッキアン的な議論に持ち込んでいるとの批判を展開し、土台がかみ合わなかった思い出があります。なんとか成立するように恣意的に条件を設定してないか、などとの批判もいただきましたが、できるだけ客観的な情報から条件設定をしていたので、そこからすりあわせるのに一苦労でした。当時のピストルの重さも、それなりに調べたのですが、都合のよい重量だと言われたり。最終的には加速度とか摩擦係数とかかなり専門領域に入ってしまったので、途中で詳細な検証は断念した記憶があります。
まあ今さら特にどうでも良いと言えばよいのですが、例によってChatGPTをあれこれ使っていたときに、ふと、あの問題について、AIに考えてもらうのはどうだろうと思いつきました。
諸条件ですが、まず遺体から欄干までの距離が15フィート。ホームズが検証に使ったワトソンのピストルは「小型で手ごろだけれどすこぶる威力のあるやつ」、弾が5発弾倉に詰められている、ひもは10ヤード、ひもの反対側にはかなり重い石。
この条件で、ピストルを撃って、手から落ちて、ひもの反対側の石の重さで引っ張られて、欄干の下にぶつかり池に落ちることはあり得るのか。
仮定として、ピストルの重さは当時の小型のピストルの重さで女性が片手で持ちながら、ひもの先のピストル以上の重さの石の重さも含めて支えられる重量、池の深さは、底から欄干まで10ヤード以上とします。前者については、当時のピストルの重さもChatGPTに聞いてみたところ、0.5キロぐらいだろうとのこと。
ChatGPTに聞いてみました。
あなたは物理学者です。池の上にかけられた橋があります。欄干は石でできていて手すりは手前に出っ張っています。ある女性がひもの片方に石を結び、もう片方にピストルを結び、石の方を欄干から池側に垂らして、もう片方のピストルをこめかみに当てて引き金を引きました。手を離れたピストルは石の重さで引きずられ、欄干の手前側の下部に傷をつけて池に落ちました。女性から欄干までは15フィート、ピストルの重さは0.5キロ、ひもの長さは10ヤード、池の深さは底から欄干まで10ヤード以上です。このような状況で、ピストルを手から離すと、石の重さでひきずられ、欄干の下部に当たって傷を付けてから池に落ちるというのは可能なのでしょうか。欄干は木製のステッキで打っても傷が付かない強度です。可能だとすると、石の重さはどれぐらいが適切でしょうか。ひもと欄干の摩擦、ピストルが橋の上を引きずられる摩擦、欄干に当たるスピード(石の欄干が傷つくぐらいの)を総合的に考慮して、このようなことが成立するか検証してください。
そして返ってきた返答がこちらです。
はい、成立します。条件を数値化して検証すると、石はだいたい 1.7〜2.0 kg 程度あれば十分に実現可能です(安全側にみて 約2 kg 推奨)。以下に前提と見積りを示します。
前提(保守的に重めの損失を採用)
女性から欄干まで:15 ft = 4.57 m(ピストルが水平に引かれる距離)
ひもの長さ:10 yd = 9.14 m(十分余裕あり。石は少なくとも 4.57 m 落ちられる)
ピストル質量:0.5 kg(重量 4.9 N)
石は池の外側に垂らした状態から落下し、大部分は水中を落ちる(浮力影響あり)
ひもは伸びない・ロープ質量は無視
デッキ上をピストルが滑りながら欄干へ(動摩擦あり)
ひもが石の欄干(手前に出っ張った手すりの角)を回るときに摩擦(カプスタン効果)あり
代表値(保守的)
ピストルと床の動摩擦係数:μ_p ≈ 0.4(金属×木or石の中間値)
ひもと石欄干の摩擦係数:μ_r ≈ 0.5、巻き角:θ ≈ π rad(約180°)
→ 張力倍率 e^{μ_r θ} = e^{1.57} ≈ 4.8(かなり不利な想定)
石の密度 ~2.5 → 水中有効重量は空中の約 0.6 倍
力とエネルギーの見積り
床上摩擦の仕事
F_p = μ_p\,W_p = 0.4 \times 4.9 \approx 2.0\,\text{N}
距離 4.57 m を引く仕事 W_{\text{床}} \approx 2.0 \times 4.57 \approx 9\,\text{J}。
欄干(角)でのロープ摩擦損失(張力差ぶんが散逸)
ピストル側張力が約 F_p とみなすと、石側張力は F_s \approx F_p e^{μ_r θ} \approx 2.0 \times 4.8 \approx 9.6\,\text{N}。
張力差 ΔT \approx 7.6\,\text{N}。この差で 4.57 m 移動するので
W_{\text{角}} \approx ΔT \times 4.57 \approx 35\,\text{J}。
石の水中有効ポテンシャル
石が 4.57 m 落ちるときの有効エネルギー
水中有効重量比 ≈ 0.6
石の質量 m_s
高さ h = 4.57 m
W_石 ≈ 0.6 × m_s × g × h ≈ 0.6 × m_s × 9.81 × 4.57 ≈ 26.9 × m_s J
欄干に当たる速度(傷を付ける条件)
床&角の損失を差し引いた残りがピストルの運動エネルギー K。
軽い擦り傷なら 1–2 J 程度でも十分ですが、余裕を見て 2–5 J を確保。
必要質量の解
損失合計(保守):
W_床 + W_角 ≈ 9 + 35 = 44 J
必要運動エネルギー K ≈ 2〜5 J
石の有効エネルギー W_石 ≥ W_床 + W_角 + K ≈ 46〜49 J
W_石 ≈ 26.9 × m_s J
26.9 × m_s ≈ 46〜49
m_s ≈ 46〜49 / 26.9
m_s ≈ 1.7〜1.8 kg
安全側で m_s ≈ 2 kg
これに K \approx 2〜5 J を加えると 46〜49 J。
よって
26.9\, m_s \;\gtrsim\; 46\text{〜}49 \quad\Rightarrow\quad m_s \;\gtrsim\; 1.7\text{〜}1.8 \,\text{kg}.
このときの到達速度例:
残り K \approx 3\text{〜}5\,\text{J} とすると
\tfrac12 m_p v^2 = 3\text{〜}5(ただし m_p=0.5 kg)→
v \approx 3.5\text{〜}4.5\,\text{m/s}。
鋼の銃身やシリンダーが石の下縁をこの速度で擦過すれば、木の杖では付かない傷が十分に付き得ます(硬度差と面圧で説明可能)。
感度(条件が変わったら)
床摩擦が小さい/巻き角が90°程度なら必要質量は1.0〜1.5 kgまで下がり得ます。
逆にロープが荒くて μ_r がもっと大きい、角での巻きが深い、石が多孔質で水中有効重量が小さい場合は 2 kg超が無難。
ひも 10 yd は十分長い(ピストル側 4.57 m を引くのに、石側も 4.57 m 落ちられればよい)。
結論
成立可能。
現実的な係数を保守的に見積もっても、石が 1.7〜2.0 kg 程度あれば、ピストル(0.5 kg)は床上摩擦と角摩擦を克服して欄干まで引き寄せられ、欄干下部に傷を付ける速度で落下に移行します。
実験的に確実性を高めるなら 約 2 kg の石を想定するとよいです。
※上の結論は、ロープが大きく伸びない・結び目が滑らない・欄干角の曲率半径が数 cm 程度・ロープが角で引っかかって停止しない、といった実用的な条件を含んでいます。
数式の処の正確性を検証できる知識を持っていないのですが、成立可能ということのようです。念のため、Geminiにも同じ質問をしたところ、成立可能との答えでした。
なお、YouTubeでも、実際に検証したシャーロッキアンがいるようで、結論としては成立したということになっています。
しかし、この検証動画では、欄干との距離が短く、ピストルがはねてしまい確実に欄干の下部に確実に傷を付けられたのかやや懸念が残ります。せっかくやるのであれば、もう少し実際に近い形でできなかったのかと思います。
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