2025年8月21日:「ベーカー街を探せ!」、「ホームズ名所の巡り方」

シャーロッキアン日記

滞在国のネット状況が非常に悪く、日記を書いても投稿できない状況になっています。バンコクで乗り継ぐときか、日本に帰国したときにまとめてアップすることにしようと思います。

日本の自宅でホームズ関連の文献が豊富にある環境と違って、出張に来ると手元にある情報源が限られます。逆に言うと一冊の本とじっくり向き合える機会とも言えます。

昨日も書きましたが、今回の出張に持ってきた本は『シャーロック・ホームズのすべて』。

ホームズを取り巻く世界の解説本ですが、本場イギリスのホーメジアンによる視点が垣間見えて貴重な文献と言えると思います。

中盤まで読み進めると、表題のようなタイトルの章があり、ベーカー街221Bの探索と、ホームズ名所の紹介がなされています。

私がホームズを読み始めたのが小学校高学年、その後小林司さんと東山あかねさんのホームズ関連の本を中学から大学まで読むふけったのがシャーロッキアンの入り口だとすると、よりアクティブに、本格的にのめり込んだのはJSHCとSHCLに入会し、ロンドンで一年を過ごした頃だったと思います。

私が最初にテーマを持って取り組んだのが、ホームズに登場する場所を手当たり次第巡ってみるということでした。ロンドンでは大学院に行っていたため、毎日の予習復習に追われていたのですが、その合間を縫って、少しずつホームズに登場する場所を、参考書でもあった「Finding Sherlock’s Lodon」とLondon A to Zという地図帳を頼りに手当たり次第訪問してみたのです。

行ってみて実感したのは、登場したところが実際にあるところはまだしも、架空の住所だったり、あやふやな描き方がされた場所があるということ。これらを正典の記載を中心に、当時入手したレスリー・クリンガーさんによる注釈付きホームズ全集なども参考にしながら解き明かして実際に行ってみるということに喜びを見いだしました。

ホームズの地理学などとも言われるようですが、「シャーロック・ホームズのすべて」では、次のように紹介されていました。

建築と郷土史の学問である「地誌学」の手法で、その場所を特定しようとした。

ホームズのすべての原著を持ってないので、地誌学がどのような英語なのか確認できませんが、辞書によれば「Regional Geography」とか「Special Geography」などと言うようです。似た言葉でTopographyという言葉もありますが、このあたりの学問的な違いについては改めてきちんと整理してみたいと思います。

 

それはさておき、『ホームズのすべて』では、ベーカー街221が実際にどこにあったのかを解き明かさそうとしてきた先人の名前と候補としている場所が羅列されていて資料性も高いです。みなさん見事に違う場所を示しているのは、ちょっと後のページで書かれているドニゴール卿(シャーロック・ホームズジャーナル編集者)の言葉である「高等批評家をめざす者の最初の目的は、先行する好投批評家がみずからの言っていることをほとんど理解していなかったという事実を、なんの疑いもないほど完全に証明することである」の忠実な実践の一例とも言えるでしょう。(平たく言うと先人と同じではつまらない・・・)

そのリストに名を連ねているのが221Bをベーカー街31番地としたSHSLの会員でもあるバーナード・デイヴィーズさん。デイヴィーズさんについては、勝手に私の心の師として尊敬しています。

彼の論文「ベーカー街の裏庭」を『シャーロック・ホームズ17の愉しみ』で読んで、ホームズを研究するということの意味を知るとともに、ロンドンをさまよっていたときもいかに彼が適切な資料を用いて場所を特定できたのかということに改めて感心しました。

留学中にあったSHSLのイベントがデイヴィーズさんによる南ロンドンツアーで、実際にお目にかかり、現場でどのようにして特定したか解説してもあるという僥倖を得ることもできました。

彼の論文集である『Holmes and Watson Country』は私の持っているホームズ本の中でもOne of the bestでもあります。そして「シャーロック・ホームズのすべて」でも、やはり「研究所の中でも最高のものの一つ」とされています。(翻訳されていないのが残念で、だれもやらないなら自分で翻訳して紹介したいぐらいの名著です)

地理学もしくは地誌学のこともきちんと押さえられている本書ですが、通り一遍ではなくかなりマニアックなところも攻めてくれているので短いセクションながら読み応えがありました。参考文献も紹介されていますが、読んでない本もあるので近く読まなければと、また欲しい本リストが増えてしまいました。

 

冒頭の写真はベーカー街の221番地があるアビーナショナルビルディングです。ちなみにベーカー街221番地はシャーロック・ホームズ博物館ではありません。

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