この週末は3連休。やりたいことはいろいろありますが、まずはサイトの見直しなどしてみようと思っていました。ところが、ホームズ関係の調べ物をしていたら興味深い団体を見つけてしまい、すっかり手が止まってしまいました。
それがアメリカの「Beacon Society(ビーコン協会」。

協会の趣旨は以下の通り。
ビーコン協会は、若い世代にシャーロック・ホームズについて知ってもらうという明確な目標を持つ団体です。協会は若い世代にシャーロック・ホームズを読む喜びと楽しみを伝えるという使命を掲げています。
なんと、ホームズについて教育するという目的の団体とのこと。
若者にシャーロック・ホームズの物語を紹介する模教師、図書館職員、博物館員、児童演劇関係者に、シャーロック・ホームズを使って若者に読書の楽しみを伝えられるように、情報や教育マテリアルを提供しているそうです。
BSI(ベイカー・ストリート・イレギュラーズ)のスコット・モンティさんもメンバーに名を連ねており、BSIの支部(Scion Society)の一つでもあるようです。
Beacon(ビーコン)というのは、日本語では灯台のこと。なぜ教育を目的とした団体が“灯台”の名を掲げているのか――その答えは、ホームズ正典の一篇「海軍条約文書事件」にありました。
「こうして高架線でロンドンへはいってゆくのは、家々が見おろせて、じつに愉快だね」
冗談なのだろうと私は思った。汚らしいながめなのだ。すると彼はすぐに説明した。
「かわらのうえにあちこちぽつんとそびえている大きな建物を見たまえ。まるでなまりいろの海にうかんだ大きなレンガの島みたいじゃないか」
「あれはみんな寄宿学校だよ」
「なあに灯台さ。未来をてらす灯火だよ。あれはまるで、小さいが元気な種子をつつんだ莢さね。あのなかからよりよき、より利口な未来のイギリスがとびたつのだ。(「海軍条約文書事件」延原謙訳)
教育を「未来を照らす灯火」と表現する――まさに、この団体の理念と響き合う言葉です。
協会のサイトを見ていると、子どもたち向けにとなっていましたが、大学生向けの3単位セミナー用シラバスまで公開されていました。そこでは、ホームズを学ぶ意義について次のように説明されています。
ヴィクトリア朝時代の人々は、たとえ全員がホームズのようにそれを絶対的な真理とは信じていなかったとしても、「芸術のための芸術」という概念を理解していました。ホームズ=ワトソンの物語は、それ自体が研究に値する価値を持つ作品であるだけでなく、文学や文章表現の技法、ヴィクトリア朝時代の女性問題、軍事史を含む歴史学、犯罪科学捜査(CSI)の誕生、科学、技術、心理学など、多岐にわたる分野を学ぶための優れた出発点となります。
大学生レベルにも耐える内容であることがうかがえます。
日本でも社会人向けの講座などでホームズを取り上げている例も見かけますが、大学の正規課程の中でホームズを取り上げているものはあるのでしょうか。
気になったので調べてみたら、立教大学にありました。ちゃんと単位ももらえるようです。
京都薬科大学にもあるようです。
そういえば、BSIのレスリー・クリンガーさんも、大学で教えていたと何かのインタビューで言ってましたので、大学教育でも充分シャーロック・ホームズは学問としても取り上げる価値のあるテーマ、ということだと思います。
私も秋は大学で講義をする機会もいくつかありますので、どこかでシャーロック・ホームズを登場させられないか、少し考えてみたいと思います。
冒頭の写真は、ホームズ引退の地、イーストボーン・セブンシスターズで撮影した灯台です。



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