今日は少しだけ暑かったでしょうか。台風が近づいているようですが、東京はまだ風も穏やかで、雨も降りませんでした。
今日はアメリカの有名なシャーロッキアンであるLeslie Klinger氏について書いてみたいと思います。何故突然今日こんなことを書いているのかというと、いろいろと事情があるのですが、またそれは落ち着いたらこちらでも書いてみたいと思います。
私がクリンガー氏のことを知ったのはロンドンに留学していた2006年のことでした。もちろん会ったということではなく、著書を通じてでした。
当時、修士課程に通っていたため、もちろん毎日の授業について行くために予習、復習がかなり大変だったのですが、せっかくロンドンに一年いられるのでなにかテーマを持って過ごしたいと思って決めたのが、ホームズゆかりの地巡り。
授業が終わった後のわずかな時間や週末を使って、こつこつとホームズ作品に登場する場所を訪問していきました。
こちらにも書いていますが、そのときに大変にお世話になった本の一つがレスリー・クリンガーさんの『New Annotated Sherlock Holmes』でした。
Annotatedというのは注釈付きというという意味で、ホームズの正典のキーワードそれぞれに注釈が着いていて、私の場合は、場所に付けられた注釈を見て、それがどこを指しているのか、何が根拠になっているのかを確認してから現地訪問をしていました。
その後、この3冊の本ではなく、より詳細な注が付いた10巻本があることを知り購入しました。
3巻の豪華本はかなり一般向けに平易な中に絞ったもので、Reference Libraryはよりシャーロッキアン向けに注が付けられたものだとのこと。
この注釈を付ける作業について、本人がどのようなアプローチを取ったのか、どんな苦労がなされたのかについて語っているインタビューがあります。
注釈と言えば、日本語訳もされているので有名なベアリング・グールドによる注釈付きホームズというのがありますが、クリンガー氏もこれに触れてシャーロッキアンになったそうです。そして、グールド版の30年後に注釈付きホームズを出すことにしたとのことで、その辺りの経緯や、手法などが上記のインタビューで語られています。
上記インタビューはいつもこちらで紹介しているIHOSEの115話なのですが、これ以前の会でも数回登場しています。私はまだ聞けてないので、いずれ聞いたときにこちらでも紹介したいと思います。
いかにしてシャーロッキアンになったのか、などは、Sherlock Holmes Magazineの2024年秋号のインタビューでも詳しく紹介されています。

BSIになったのは1999年だそうで、最初にBSIディナーに招待されてから4年後だったと語られていました。
BSIメンバーになるには、メンバーの紹介でディナーに参加して、という過程を何度か繰り返してなれる(こともある)と聞いていましたが、クリンガー氏も(NYから遠いカリフォルニアに住んでいたとはいえ)4回かかったというのはいかに狭き門なのかということが分かります。
彼のホームズ研究の成果については、論文集が2冊出ており、こちらも彼の関心の広さや研究の発展が分かり興味深いものとなっています。
この他、シャーロッキアンとしての偉業の一つがコナン・ドイル財団との裁判に勝ったというエピソードでしょう。こちらは、彼とローリー・キング女史が監修したホームズパスティーシュ集にも関連が深いので、いずれ第二弾で詳しく説明していきたいと思っています。
冒頭の写真は私のささやかな書斎にある『New Annotated Sherlock Holmes』。いわゆる鈍器本ですが、机の上の高いところに保管しているので、地震で落ちてこないかが心配です。



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