ラジオ女優のペギー・ウェッバーさんが、8月15日にカリフォルニア州ナパの高齢者向け住宅施設で息を引き取りました。100歳でした。息子のロブ・シンスキーさんがThe Hollywood Reporterに語ったところによると、自然死だったとのことです。
1925年9月15日、テキサス州ララードに生まれたウェッバーさんは、わずか12歳でラジオデビューを果たし、以来70年近くにわたって声の仕事を続けてきた人物です。1946年の『タイム』誌には、「3年間で150もの異なる役柄を、約2,500本の放送で演じ分けてきた」と紹介されたほどの多才ぶりでした。オーソン・ウェルズ監督の1948年版『マクベス』ではマクダフ夫人役を、アルフレッド・ヒッチコック監督の『間違えられた男』(1956年)にも出演しています。1958年のホラー映画『悲鳴を上げる頭蓋骨』でのヒロイン役から、初期の「スクリーム・クイーン」の一人として記憶されている面もあります。
「ラスボーン=ブルース」ではなく「コンウェイ=ブルース」期の出演
各種の訃報記事は、ウェッバーさんの代表的な出演作としてラジオドラマ『シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)』を挙げ、「ベイジル・ラスボーンとナイジェル・ブルースと共演」という書き方をしています(例:Yahoo Entertainment)。ただ、これは番組を最も有名な主演コンビの名前で紹介する、いわば「シリーズの識別子」的な表現であり、ウェッバーさんが実際にラスボーンと共演したことを意味するものではなさそうです。同記事は他の出演番組についても「ライオネル・バリモアとルー・エアーズ主演の『ドクター・キルデアの物語』」のように、同様の括り方をしています。
実際に一次資料をたどると、ウェッバーさんの出演が確認できるのは、ラスボーン降板後のトム・コンウェイ=ナイジェル・ブルース期です。ラスボーンの最終出演回は1946年5月27日放送の「The Singular Affair of the Baconian Cipher」で、同年10月12日からコンウェイが後任のホームズ役を務めました(The Arthur Conan Doyle Encyclopedia)。
Radio Spirits社が2014年にリリースしたCDセット「Sherlock Holmes: Cue for Murder」は、1947年2月10日から同年6月2日にかけて放送された16話を収録したもので、公式ページには出演者として「Ben Wright, Peggy Webber, Lurene Tuttle, Edgar Barrier, Maxine Marx」、さらに「Mary GordonがMrs. Hudson役、Frederick WorlockがLestrade役」と明記されています。これは紛れもなくコンウェイ期の作品です。
一方、ラスボーン=ブルース期(1939〜1946年)の出演者を丹念に洗い出しているファンサイトrathboneandbruce.netの脇役キャスト一覧には、ウェッバーさんの名前は見当たりませんでした。もっとも、これらのログは網羅的なものではないため、「出演していない」という確証にはならず、「確認できなかった」という留保付きの話にはなります。
なお、ウェッバーさん自身のプロフィールには「ビル・スパイアーの『サスペンス』『サム・スペード』、そして『シャーロック・ホームズ』」といった趣旨の記述も見られますが、ウィリアム・スパイアーは『サスペンス』(1942〜1947年)や『サム・スペードの冒険』(1946〜1951年)のプロデューサー・ディレクターであり、『シャーロック・ホームズ』ラジオ版のプロデューサーではありませんでした(同作のプロデューサーは、ラスボーン期がハロルド・ケンプ/トム・マックナイト、コンウェイ期がマックナイトの再任です)。この記述はやや不正確で、少なくともラスボーン期出演の裏付けにはなりません。
結論として、ウェッバーさんが実際に出演していたのは、ラスボーン降板後のコンウェイ=ブルース期のシリーズであると見るのが妥当です。各話ごとにどのエピソードに出演したかまでは、現時点で公開されている資料からは特定できませんでした。Cue for Murderに付属するBaker Street Irregularのウィリアム・ナデル氏執筆によるプログラムガイド(物理CDのブックレット)や、各話音源のエンドクレジットを直接確認する必要がありそうです。
おわりに
ラジオドラマ全盛期を支えた名脇役の一人として、ウェッバーさんの功績を偲びたいと思います。ラスボーン=ブルース期ほど広く知られてはいないコンウェイ=ブルース期のシリーズですが、こうした訃報をきっかけに、埋もれがちな時期の作品にも光が当たればと感じます。
出典
- The Hollywood Reporter: “Peggy Webber, Prolific Radio Actress Who Worked for Orson Welles and Alfred Hitchcock on Film, Dies at 100”
- Yahoo Entertainment: 同記事転載版
- The Arthur Conan Doyle Encyclopedia: The Adventures of Sherlock Holmes (radio 1939-1946)
- Radio Spirits公式ページ: Sherlock Holmes: Cue For Murder
- rathboneandbruce.net: The New Adventures of Sherlock Holmes Old-time Radio Show – Supporting Cast
- Wellesnet: ‘Macbeth’ actress Peggy Webber dead at 100

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